限界書評~はじめの5冊~
人は何のために読書するのか。
ずばり、本を読まないと始まらないから読むのだ。
そんな現代限界芸術研究会、代表推薦の5冊を紹介したい。
どれか1冊でも購読してもらえればうれしい。
これ読まなきゃあ始まらない。
「純粋芸術(プロが作りプロが評価する芸術)」、「大衆芸術(プロが作りアマが評価する芸術)」、「限界芸術(アマが作りアマが評価する芸術)」という分類は議論する価値あり。言説自体は半世紀以上前のものだが、芸術の幅を広げたという意味で現代でも重視されている(はず)の本。
「限界芸術」への言及は序盤に集中しており、中盤以降は「大衆芸術論」に割かれている。『万朝報』を創刊したジャーナリストの黒岩涙香の生涯などが鮮やかに語られる。
2.『美術の物語』E.H.ゴンブリッチ ファイドン
- 作者: エルンスト・H.ゴンブリッチ,E.H. Gombrich
- 出版社/メーカー: ファイドン
- 発売日: 2011/11
- メディア: 単行本
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過去の美術史を網羅しつつ、美術がどのような課題を解決してきたのかをダイナミックに描く古典的名著。教科書的な文章ではない、ワクワクしながら読み進められるような快い筆致。ゴンブリッチの時代感覚に舌を巻きつつ、美しい図版を眺めるという至福のひと時を一ヶ月は味わえるだろう。
特に西洋美術史に興味のある方に強く勧めたい。
3.『贈与論』 マルセル・モース(森山工訳) 岩波文庫
いままで紹介した芸術系の本とは毛色が違うが、研究会で話題に上がるので紹介したい。原始的な文化に興味があるなら、これは一度読んでおくといいだろう。
様々な地域の事例をもとに、貨幣以前の経済の在り方を描き出す。ここでモースが語る「贈与」を、現代の我々がいかに引き継ぐか、あるいは否定するか。大都市に取り込まれない地域文化の現代を考えるための出発点のひとつではないだろうか。
4.ヴァナキュラー文化と現代社会 ウェルズ恵子編 思文閣出版
最近流行り(?)の「ヴァナキュラー文化」についての論文集。いわゆるマイノリティ文化だけに閉じていない、バランスのいい本。オリンピックからナバホ族まで、扱うジャンルは多岐にわたる。「限界芸術」や「民衆芸術」の研究を標榜する本会にとって、これだけ議論のフックがあるのはありがたい。難しい学術用語も少ないため、現実の社会に対しての誠実さも感じた良書。
社会問題に漠然と関心のある方に勧めたい一冊。
5.『エロスの涙』 G.バタイユ(森本和夫訳) ちくま学芸文庫
- 作者: ジョルジュバタイユ,Georges Bataille,森本和夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2001/04/01
- メディア: 文庫
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はい、ごめんなさい。バタイユ好きなんです。絶対「はじめの5冊」というくくりに入れるべきじゃないのは分かっているのだけれど、指が勝手に……。
恍惚-恐怖という感情の二極を絡ませながら語る、バタイユの絶筆。感情を揺さぶるような言葉の強さ、そして独特の感覚で語られる美しい世界。
牢獄の中のサドとゴヤ。部族の儀式の恍惚と中国の処刑の恐怖。眩暈のするような侵犯の持つエネルギーが、いつのまにか読者を酔わせるだろう。
まだまだ紹介したい(しないといけない)本もあるのだが、もう深夜だし、また別の機会にしようと思う。おやすみなさい。